日刀保たたら・たたら製鉄

日刀保たたら・たたら製鉄
金属のお話しで、触れなければならない伝統技法。
砂鉄とか鉄鉱石など自然界では、鉄は酸化物として掘り出されます。
イオン化傾向が高い為、錆を生じやすいが、
鉄の純度が高ければ高いほど、酸に侵されにくくなる特徴を持ちます。
(硫酸・塩酸・硝酸・王水にも耐酸性を有する)
また、高い可逆性を有します。(ひずみが少なく変形すること)

国宝建築物の城や神社に使われる楔・釘・刀・日本包丁など
たたら製鉄の技法で作られ鉄である為、錆びにくいのです。

元素名 融点℃ 沸点℃ 温度差℃ 固体密度 液体密度 密度差
Fe 1538 2862 1324 7.874 6.98 0.894

変態温度
フェライト(BCC構造=体心立方格子構造)911℃以下
オーステナイト(FCC構造=面心立方格子構造)911 – 1392 ℃
デルタフェライト(BCC構造=体心立方格子構造)1392 – 1536 ℃

不思議な温度関係
鉄の融点は1538℃
炭の燃える温度は、1200℃前後
何故鉄が溶けるのでしょうか?
炭素は、金属に浸炭すると融点を下げる特徴を持ち合わせ、
砂鉄を利用するからです。鉄の塊では溶けないで
金属表面だけ、固溶層を作ります。

オーステナイト(FCC構造=面心立方格子構造)911 – 1392 ℃
その温度領域にあるγ鉄は比較的多くの他元素を固溶
することが出来るようになり、金属が溶けた感じに見える。
合金した状態と同じような特性になる為で、実際は1536℃以上にならないと
鉄は、溶けてないのです。

砂鉄に含まれている不純物は、酸素と反応して別な化合物ノロとなり排出されたり、
燃える熱で揮発して無くなったりします。
酸化鉄に付いている酸素と炭である炭素が結び付き、純鉄が精練される仕組みです。

詳しくは、下記↓を参照してください
たたら製鉄の道

村下(むらげ)の自己犠牲しながら伝統の技は素晴らしいですね。
(眩しい炭の光を見る為、目をやられてしまいます)

製鉄と環境破壊
たたら製鉄には大量の炭が必要とされます。
便利さと引き換えに、森林伐採が必要とされ日本の山は現在に至ります。
炭焼き小屋の周りは、山を伐採し炭を作り、鉄の精錬や陶磁器作りに利用されてきました。

現在廃墟と化した村は、炭焼き小屋があったところが多いもので、
はげ山と呼ばれる山の多くは、炭焼き小屋の跡地だったりします。

現在は、石炭や電機に代用されそれらは作られていますが、
グルメで利用される、備長炭なども炭。大切に使いたいものです。
バーベキューで使用する炭は、安価に生産する為に木材は輸入に頼っています。
そんなこと考えてしまうと、何処かの国ではげ山が?などと・・・
お洒落な薪ストーブも、別な視点になってしまうものですね。

余談ですが、鹿児島県の屋久島、樹齢千年の屋久島杉が
曲がりくねっている理由は、木材として利用できないから
伐採されず現在まで残っている訳です。(皮肉なものですね)
屋久島の自然林は、人工的な自然だったのです。
夢を壊してしまいました。

伝統技術の裏側には、悲しい日本の歴史を感じます。
そればかりに特化してしまえば、日本の伝統技術は衰退してしまいます。

鉄の話から、いろいろ考えさせられます。

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